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30 December

ヘロンの遊戯機械

タイトル「ヘロンの遊戯機械」のヘロンは、アレクサンドリアのヘロンと呼ばれるギリシア人で工学者・数学者という肩書きを持つ人名です。(生没年不詳)

彼は蒸気の仕掛けや圧搾ポンプを発明した人物ですがその傍ら、発見した原理を用いた遊戯機械を作っています。詳しくは省きますが、純粋に「遊戯」目的の大掛かりなもので、何か他の実務的な事の役には立ちません。

 

私の描く歯車も実際に動き出して動力を生むことはありません。けれど何かに使役されることから解き放たれて、遊ぶこと(遊戯)が一切なくなると、世界はどれだけ無味乾燥と殺伐とすることでしょう。

 

私の郷里では絵を描くことに関して理解を示してくれる人は多くありません。ともすれば「生活の役に立たない」「知らなくても出来なくても生きていける」と、暗にまたははっきりと言われる事もよくある話です。

そう言われた時私は曖昧に笑って、仕方なく相槌を打ちます。

 

けれど私にとって絵を描くことは「役に立たない」ことでも「出来なくても生きていける」ことでもないのです。

それは絵を描いてもしくは何かを創り出している人にとって、この言葉はその全てを否定していると私は思うのです。

 

「歯車を描く」ということは現実には動力を生むことのない、傍から見れば無駄な作業に見えるかもしれません。しかし今の私にとっては、その工程が生きていくのに必要な動きなのです。

歯車を描いているとき歪な私自身が一つの歯車となったかのような、安心・陶酔・救いが綯い交ぜになった、他では得難い程の穏やかな気持ちを得ています。そうして、時に消えてしまいたい思いに駆られた私を今まで何度踏みとどまらせたかしれないのです。


 

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